チェンソーマンに見る!いろんな狂った愛し方~デンジ編~

衝撃的すぎる漫画を読みました。

 

そのタイトルは「チェンソーマン」

 

「2020年このマンガがすごい!オトコ編」で1位を獲得し、2022年7月時点で累計発行部数は1,300万部。

 

Twitterでもよくトレンド入りしていた作品なので、すでにその名をご存知の方や、誰かに勧められてもう読まれた方もいらっしゃるかもしれません。

 

チェンソーマンは、第66回小学館漫画賞の少年向け部門を受賞しているのですが、全然少年向けじゃないんですよ。

 

よくこの作品が少年ジャンプで連載できたなと思うぐらい、イカれてるしぶっ飛んでるんですよね。

 

「エロ」「グロ」「非道徳的」など、少年ジャンプで掲載できるギリギリのところを攻めまくってます。

 

個人的には、ここ数年で読んだ漫画の中でダントツで面白いと思ったし、読み終わったあと、あらゆる考察サイトを何時間も読みふけるぐらいドハマりしました。

 

この作品は、緻密に張り巡らされた伏線が売りの一つなんですよ。

 

作者である藤本タツキ先生は名言していませんが、すべての物語が最終話に向けて作られていると感じました。

 

1回読んだぐらいではわからないシーンが多いのも特徴で、「あの場面はどういうことなんだろう?」「あれはどういう意味だったんだろう?」と疑問に思うことも沢山ありました。

 

考察サイトでその疑問が解明されたとき、驚きすぎて鳥肌が立つということが何度もあったんですよね。

 

興奮冷めやらぬとはこのことで、もう一度最初から読み直すなら、迷わずこの作品を選びます。

 

チェンソーマンは、7月13日から第2部が「少年ジャンプ+」で連載開始され、開始時期は未定ですが、年内にはアニメ版が放映されることが確定しています。

 

アニメが放映されたらおそらく、鬼滅の刃や呪術廻戦なみの社会現象になる可能性が高いので、ご興味がおありの方は今からチェックしてみてはいかがでしょうか。

 

いろんな考察サイトを見ていて、僕もチェンソーマンのことについてどうしても書きたいという衝動に駆られてしまいました。

 

でも、だまされない女のつくり方は恋愛ブログであり、人々が幸福になるための方法を記したブログ。

 

その半面、人間の闇を記していることもよくあるので、チェンソーマンについて書くなら「狂った愛」をテーマに書いてみようと思いました。

 

そんなわけで今回は、「チェンソーマンに見る!いろんな狂った愛し方」をテーマにお話したいと思います。

 

以下、かなりのネタバレを含みますので、これからチェンソーマンを読もうと思ってる方はご注意ください。

 



 

デンジの初恋。

主人公であるデンジは、内閣官房長官直属のデビルハンターであるマキマに恋をします。

 

そのきっかけとなったのは、彼がチェンソーマンとして覚醒し、ゾンビの悪魔を退治したあと彼女に抱きしめられたことが発端です。

 

第2話でデンジは、「はじめて優しくされた それもいいツラの女に…好き」と心の中でつぶやいているのですが、恋愛感情って本能じゃないですか。

 

僕がいろんな媒体で話しているとおり、恋愛感情は「何かをしたら好きになってもらえて、何かされたら好きになるというものではない」んですよ。

 

つまり、彼がマキマを好きになったのは、彼女のルックスが好みだったからであって、優しくされたことが理由ではないと僕は推測します。

 

なので、デンジの恋心のきっかけに理由をつけるのだとしたら「いいツラの女だから好き そんな女にはじめて優しくされた」なんじゃないかなと思いました。

 

しかし、彼のことを犬のように扱うマキマに対し、「あんな怖い女だったなんて!」とデンジは自分の恋心を否定します。

 

マキマは目的のためにデンジを飼いならす必要があるので、彼が自分のことを好きでいてくれるように、思わせぶりな態度を取り続けます。

 

その結果、デンジは彼女に完全に心を奪われてしまうのですが、マキマは公安警察の中でも雲の上的存在の人です。

 

しかも、彼女がしてくれた約束はかなり難易度が高いものであり、叶うかどうかわからないもの。

 

そんな中現れたのが黒髪の美女、レゼになります。

 

デンジの気持ちに揺さぶりをかけまくる美女レゼ。

レゼとデンジの2人は、雨宿りのために入った電話ボックスの中で出会います。

 

しかしこれは偶然の出来事ではなく、すべて仕組まれたもの。

 

彼女の正体は、かつてソ連軍が戦士を育てるために人体実験の要員として集めた「モルモット」と呼ばれる子ども達の一員であり、爆弾の悪魔です。

 

レゼもまた、デンジの心臓を狙いに来ていた人物の1人だったのです。

 

デンジに対し彼女は、非常に距離が近く、よく触れてくれてよく笑います。

 

一緒にいてレゼが顔を赤らめることもよくあったので、デンジは彼女が自分のことを好きなんじゃないかと思うんですね。

 

デンジはチェンソーマンになる前、人から優しくされたことがなかったため、自分もレゼが好きだと思い始めます。

 

つまり、自分のことを好いてくれる異性を好きだと勘違いする現象を、彼もまた体感したのです。

 

彼は「俺は俺の事が好きな人が好きだ」と言っていますが、これはレゼが美女であり、デンジのタイプだったことが大きいというのが僕の見解です。

 

デンジがレゼに対して「殺されるなら美人にってのが俺の座右の銘」と言っているあたり、彼女がかなりのタイプであることは間違いないと言えるでしょう。

 

ただ「いいな」と思う程度のタイプ具合だったら、デンジも殺されたくないでしょうからね。

 

実際、彼は正体を明かす前の彼女に対してメロメロになっていたのですが、かなり高度な小悪魔テクニックをレゼは多用しまくっています。

 

そして彼女は頃合いを見計らい、「仕事やめて…私と一緒に逃げない?」という提案をデンジにするんですよ。

 

しか断られてしまったため、そこからデンジとレゼの死闘が始まります。

 

その結果、彼が勝利するのですが、デンジはレゼを殺すことができませんでした。

 

公安がレゼを捕まえることに違和感を覚えていたデンジは、今度は彼の方から「一緒に逃げねえ?」と提案します。

 

しかも、この期に及んでまだデンジはレゼのことを好きだと言うんですよね。

 

デンジはその人のイメージを愛して美化してしまう傾向があるのですが、これは彼に限らず、誰かのことを本気で好きになったら、たとえ酷い目に遭わされたとしてもなかなか嫌いになれないものです。

 

ただ、少なくともレゼはマキマと違って、演技ではなくデンジのことをちゃんと好きだったのではないか?という描写がいくつかありました。

 

それに彼自身も気づいていたため、好きだけど得体が知れない女性のことを思い続けるよりも、自分を好いてくれている可能性が高い方の女性を選んだのではないかと推測します。

 

そう考えると、「俺は俺の事が好きな人が好きだ」という台詞の意味も少し変わってきますよね。

 

相手の得体が知れない上に叶いにくそうな恋を選ぶより、常に危険は伴うけど、自分を好いてくれる美女と一緒に逃げた方が、デンジにとっては色々と都合がいいからです。

 

チェンソーマンという作品は、「抱きしめる」が数あるテーマの一つになっているのですが、レゼと一緒にいたら好きなときに抱きしめてもらえるし、自分も彼女を抱きしめることができます。

 

それは、今まで誰にも優しくされたことがないデンジと、ぬくもりを欲していたポチタと一体化した彼にとっては、非常に重要なことだと言えるでしょう。

 

しかしレゼは、デンジの提案を断りその場を立ち去ります。

 

そして彼女は途中で思い直し、デンジの元へ戻ろうとします。

 

でもそれは、マキマの手によって実現されませんでした。

 

マキマにより、レゼは殺害されてしまうからです。

 



 

マキマへの気持ちが復活。

デンジは、「俺のハートはレゼに奪われちまった、もう一生喜んだり悲しんだりできないのかもしれない」と失意に明け暮れます。

 

この描写だけを見ると、彼は本気でレゼのことが好きだったのかと思ってしまうのですが、それはマキマの「旅行に行かない?」という提案によって一気に覆されるんですよ。

 

このときからしばらくの間、デンジの頭の中はマキマと江ノ島に旅行へ行くことでいっぱいになるのですが、この描写を見て次のような疑問を持った方もいらっしゃるかもしれませんね。

 

本気で好きだった人のことを、そんな一瞬で忘れられる?

所詮は漫画だし、そこまでの心理描写はないってこと?

 

僕はそうは思いません。

 

まず、デンジは単純です。

 

難しいことは考えられないし、本能だけで動いているような男です。

 

そして単純でありながら、超がつくほどの純粋な男でもあります。

 

前述したように、レゼはかなり高度な小悪魔テクニックを使って、デンジの本能を刺激しています。

 

恋愛感情のほとんどは性欲で構成されているという説がありますから、そこまで本能に訴えかけられたら、本気で好きだと勘違いしてもおかしくないんですよね。

 

しかも純粋なわけですから、自分の気持ちがそうだと信じて疑わないのもセットです。

 

しかし、ド本命だったマキマから旅行を提案され、デンジは失意のどん底から一転し、かなり浮かれ上がります。

 

この描写を見て僕は、デンジはレゼにのぼせ上がっていただけなんだなと思いました。

 

「謎が多かった人ともっと親密になれるかもしれない」「叶いにくそうな恋が進展するかもしれない」という期待が爆発し、本当に好きな人は誰だったのかに気づいたのではないか?というのが僕の見解です。

 

では、なぜのぼせ上がっていただけなのに、レゼが爆弾の悪魔だったことや、デンジへの好意がすべて演技だったことを知っても彼は気持ちが冷めなかったのか?

 

前述したように、誰かを本気で好きになったり、本気で好きだと錯覚したとき、ほとんどの人はたとえどんなに酷いことをされても、その相手のことをいきなり嫌いになることはできません。

 

「好きになった人がそんな酷い人間であるとは認めたくない」という気持ちも生まれますからね。

 

あと、マキマへの気持ちが再燃したのは、タイミングによることも大きいです。

 

つまり、もう二度とレゼに会えないとデンジが弱っているときに、マキマが手を差し伸べたということです。

 

しかも彼女はデンジにとってのド本命なわけですから、そのような相手がプライベートの誘いを提案してきたら、気持ちがぶり返すのはしょうがないことかもしれないと思いました。

 

デンジは単純すぎる性格ということもあり、この異常な切り替えの早さにつながったのかもしれないですね。

 

実際、本気で好きな人がいて、その人との関係がなかなか進展しないとき、突如ものすごくタイプの異性が現れて、自分のことを好きだと言ってきたらほとんどの人が流されてしまうと思います。

 

現実ではドラマのように、「それでも私は彼が好き」というように、自分の思いを貫けるほど強い人はほとんどいないからです。

 

そして、後から現れた異性との恋が結局叶わなくなり、二度と会えないとわかったとき、元々好きだった人から誘いを受けたら、これまたほとんどの人がデンジのようになってしまうのではないでしょうか。

 

デンジのように異常な切り替えの早さができず、思いっきり浮かれ上がれないというだけで。

 

ちなみに、マキマのタイミングが良かったのは、彼女が画策していた可能性が高いと僕は思っています。

 

なぜならマキマには、小動物や鳥を使った盗聴能力があるので、デンジが弱りきっているタイミングを見計らうことができるからです。

 

心をバキバキに折られたデンジ。

82話でマキマの真の目的が明かされます。

 

彼女はデンジに次のように言い放つんですよ。

 

「私は考えたんだ

どうすればデンジ君が普通の生活ができなくなるくらい、一生立ち直れないくらい傷ついてくれるかって。

だってデンジ君はポチタとしてた生活でも十分幸せに感じてたから。

だからまず最初に、デンジ君をうんと幸せにする事にしたの。

仕事を用意してお金をあげて、おいしいものをたくさん食べさせて、デンジ君と仲良くなってくれそうな家族も用意した。

アキ君は良いお兄ちゃんになってくれたし、パワーちゃんは世話の焼ける妹になってくれた。

そういう幸せをデンジ君の普通にして、それから全部壊すの。

これからデンジ君が体験する幸せとか普通とかはね、全部私が作るし全部私が壊しちゃうんだ。

悲しみを乗り越えて友達を作っても、すぐ私が殺す。

結婚して家庭を持っても、奥さんと子供は長生きさせない」

 

デンジの目の前でパワーを殺した直後、このような思惑を告げたマキマ。

 

「そんなどうして」と言うデンジに、彼女はさらに追い打ちをかけます。

 

あまりにもつらい出来事だったため、その現実を受け止めることができず、「父親が自殺をした」と記憶を改ざんしていたデンジ。

 

マキマから真相を告げられ、デンジは一生立ち直れないほど傷つき、心をバキバキに折られてしまいます。

 

デンジの狂った愛し方。

マキマの正体は、「支配の悪魔」です。

 

そしてマキマは、内閣総理大臣との契約により、マキマへの攻撃は適当な日本国民の病気や事故に変換されてしまいます。

 

つまりマキマが死ぬと、日本人の誰かが代わりに死ぬ。

 

実質、彼女は不死身のようなものなんです。

 

マキマが死ぬことがあるんだとしたら、それは日本国民全員の命がなくなったときです。

 

マキマは、対マキマ対策部隊やチェンソーマンによって何度も殺されるのですが、その度に復活します。

 

読みながら、「こんなんどうやって倒すねん」と思っていたのですが、とどめはデンジが刺します。

 

ただ、普通に殺しても彼女は必ず蘇る。

 

そこで戦いを終えて家に帰ったデンジは、冷蔵庫をあさりながら次のように言うんですよ。

 

「俺、あんな目にあっといてまだ心底マキマさんが好きなんだ。

でも、アンタが今までしたことは死んでった連中が許さねえ。

だからさ、俺も一緒に背負うよ、マキマさんの罪。

でもどうやってだって?

俺とマキマさんで爆弾抱えて心中すっか?

でも、聞いた話じゃマキマさんにゃあ攻撃は通じねえ。

ふーん、攻撃は通じねえんだ、そこで天才!俺は閃いた。

マキマさんと俺、一つになりゃあいいんだ」

 

彼が取った行動とは、「マキマを食すこと」だったんです。

 

しかし、マキマは何度でも蘇るため、デンジのお腹やトイレから復活する可能性がありますよね。

 

その懸念点を岸辺に問われたデンジは次のように言います。

 

「俺はマキマさんを傷つけるつもりなんてないんです、そう本気で思ってるんすよ。

俺はマキマさんを食べて一つになった。

攻撃じゃない、愛ですよ、愛」

 

つまり、マキマにとって「攻撃されている」という認識がないため、彼女は蘇らなかったということです。

 



 

デンジの愛し方は狂っているのか?

ここで今回のブログのテーマである、「デンジの狂った愛し方」。

 

では、「デンジのマキマに対する愛は本当に狂っているのか?」と聞かれると、僕はそう思いません。

 

狂っているのだとしたら、人を食べるという概念と行動だけであって、彼の愛し方は一つの愛として成立すると思っています。

 

まさかの食人エンドに、初見のチェンソーマン読者は度肝を抜かれたのではないかと思うのですが、この方法以外でマキマを倒す手段があるか?と言えば何も思いつかないんですよね。

 

かと言って、彼女はあまりにも多くの同胞や人間を殺しすぎたので、許して生かすこともできない。

 

心中しても蘇って、またマキマは理想の世界作りのために、世界を混沌の渦に巻き込もうとする。

 

「その状態でどうやってマキマを倒して愛することができるのか?」という問いに、デンジは「一緒に罪を背負い食べて一つになること」を選んだわけです。

 

もちろん、作中にその問いはありませんでしたが、デンジがしたのは狂った愛し方ではなく、選択肢的にそうなってしまったということです。

 

まとめ。

以上になりますが、彼の愛し方がなぜ一つの愛として成立するのかと言うと、実はもう一つ理由があるんですよ。

 

その理由とは、デンジは死んでも認めたくない現実を受け入れた上で、マキマのことを愛したからなんです。

 

「どうしてマキマに気づかれずに攻撃できた?アイツの事だ、すぐに気づかれるだろう」と岸辺に聞かれたデンジは次のように答えます。

 

「マキマさんはね、匂いで俺達を見てるんです。

一人一人の顔なんて覚えちゃいなくて、気になるヤツの匂いだけしか覚えていない。

俺はね、賭けたんですよ。

マキマさんが俺じゃなくてず〜っとチェンソーマンしか見てない事に。

俺ん事なんて最初から一度も見てくれてなかったんだ」

 

本気で好きになった人が、最初から自分のことを好きでもなんでもなかった。

 

自分のことを何も見てくれていなかった。

 

このつらく厳しい現実って受け入れがたいし、認めたくないじゃないですか。

 

でも、デンジはその認めたくない現実を認めた上でマキマのことを愛したわけですから、それを愛と呼ばずしてなんと呼べばいいでしょうか。

 

「好きな人が自分のことを好きでもなんでもない」ことを認めないままその人のことを愛するのって、相手のことを何も見てないまま自分を承認してもらうのと同じですから、独りよがりな愛になってしまうんですよね。

 

前述したように、デンジは単純です。

 

難しいことを考えられないはずの彼が、認めたくないことを認めた上で、考えに考えた結果がマキマを食すという愛し方だったということです。

 

僕はデンジなりのこの愛し方が、非常に彼らしいと思いましたし、一つの愛の形であると思いました。

 

「チェンソーマンに見る!いろんな狂った愛し方~マキマ編~はこちらから!」

 

 

【少年ジャンプ+でチェンソーマンが読めます!】

 

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